秋雨 アレンジ裏話

あきさめです。ボカロとかの楽譜作ります。

【アレンジ裏話】メリーの水槽

メリーの水槽 / FILEIN (pianoarrange)

https://youtu.be/JcZSifbu6LI?si=RGHN42mK8LJptt_P

 

2022年のトリを飾ったアレンジです。
「不思議」というより「神聖」なイメージを持ちつつ、無機質にも感じる独特な世界観を持つ曲です。(個人の感想です。)ではでは、少しだけ音楽的にみていきましょう。まずなんと言っても、特徴の第一は拍子ですね。5/8拍子。(採譜動画では5/4としていましたが誤りです。)なかなか普通に生活していて出会うことはない拍子といえます。強いてあげるなら、『Take Five』か『ミッションインポッシブル』でしょうか。ただ、これらの曲と違うのは、規則的に、かつ比較的短いスパンで拍子が変わる点です。4小節ごとに6/8が1小節挟まれます。ケルト系の音楽に見られる拍子、という印象があります。ケルトならBill Whelanの『Riverdance』がオススメ。個人的に人生で1度は生で見てみたい舞台です。もちろん王道のThe Chieftainsもいいですよ。同じ変拍子なのに何故ここまで印象が変わってしまうのか。これはグルーヴと呼ばれるヤツです。定義は……よく分からない、というのが正直なところ。ノリとかビートとかとも言い換えれます。あえて言うなら……曲って体を動かしたくなりませんか。踊る、までは行かなくても、拍をとりませんか。足だったり、指だったり、あるいは頭だったり。これがグルーヴなのかもしれません。つまるところ、音楽には体を動かしたくなる力があるのです。それを最大限に生かしたのがケルト音楽。変拍子って拍は少し取りづらいですが、慣れてしまえばこの上なくウキウキする、それこそ踊りたくなる拍子なんです。でもそれは「ケルトのグルーヴ」があってこそ。このグルーヴがなくなると、そこにあるのは難解な拍子。言い方を変えれば、踊るに踊れない拍子でしょうか。今回の『メリーの水槽』はこれなんですね。踊りって極めて人間 / 動物的ですよね。命を感じます。その「踊り」を感じないというのは、裏を返せば非人間的なものを感じさせる、ということです。冒頭に述べた「神聖さ」もこの非人間性から来ていたのかもしれません。『メリーの水槽』のもつ無機質は単にMVが白黒とか、歌詞が哲学、理数的とかだけじゃないんです。「神聖さ」と言えば教会音楽ですが、これは……長くなるのでこの話はまた今度にしましょうか。

ところでMV間奏部分の『メリーの水槽』実験は読みましたか?あれ、面白いですよね。他にも沢山の思考実験が盛り込まれているので是非丁寧に見てみてくださいね。中でも「中国語の部屋」はボーカロイドにも当てはまりますよ。歌詞の通り歌えど、意味を知りえないボーカロイド。それをどう捉えるかはあなた次第……。

メリーの水槽 / FILEIN
https://youtu.be/RfOq7EEo88I?si=7Xcu_Zpj4zl6bYP-